プロダクト開発で重要なことは兎に角ユーザーヒアリングをすること

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こんにちは。M&Aクラウドでプロダクトマネージャーをやっている横田です。 先月シリーズBの投資ラウンドで2.2億の資金調達のプレスリリースを終えて従業員も約30人にまで増え、2年前に僕が入社を決めたときにはまだ社員が4名しかいなかったことにとてもなつかしさを憶えています・・・

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そんな絶好調のM&Aクラウドですが、今日はプロダクト開発においてどんなサービスでも必ず直面する「使ってもらえる機能開発をするためにはどうすれば良いか?」という命題について、「ユーザーヒアリングがとても重要」だという話をします。

特に、今年の2月にリリースをした「クローズドプラン」というM&Aクラウドの新機能ができるまでのプロダクト開発の過程(特にヒアリングについて)をご紹介したいと思います! macloud.jp

このブログで伝えたいこと

  • ユーザーヒアリングを軽視してプロダクト開発をするとひどいことになる笑
  • ユーザーヒアリングは「事前準備」と「試行回数」につきる
  • オペレーションの構築まで考え抜いた開発を行う

1分で分かる背景

M&Aクラウド「会社を売りたい起業家が買い手に直接アプローチすることができるプラットフォーム」という新しい体験を売りにしているベンチャー企業です。 「買いたい」という企業(一流・優良企業ばかり)がまるで「リクナビ」のようにM&Aニーズを掲載しているところがポイントなのです。

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しかし、「M&Aニーズを掲載する」というのはいままでの日本の商習慣では存在せず、「顔出しNG」という理由で、M&Aクラウドへの掲載を断られることがとても多いのです。
※とはいえ、徐々に世間の認識を変えられてきているのか、M&Aクラウドの掲載社数は順調に成長しており、2020年6月は過去最高の掲載売上を記録

そこで「買い手が掲載せずともM&Aクラウドのサービスを利用できる機能を開発したら、もっとプロダクトが成長するのではないか」という仮説のもと、このプロジェクトはスタートしました。

クローズドプランの前身である「トライアルプラン」の"失敗"

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実はクローズドプランを開発する前に、営業チームの日々の営業活動の報告結果から「顔出しNG」でお断りされるのは体の良い方便で、本当は「もっと気軽にM&Aクラウドのサービスを利用できるようになれば利用社数は増えるのではないか?」という仮説を持っていました。

そこで、「トライアルプラン」という、従来のM&Aニーズを取材してプロのライターが掲載記事を書く方法ではなく、買い手企業が自らM&Aニーズを書き宣材写真等を準備する代わりに、初期費用が無料になるプランを立案して開発をしました。

f:id:yokotinnn:20200712211522j:plain ※料金体系等は当時のものなのでご注意ください。

このプランはWantedlyのように、求人の募集記事を自ら運用するUXがワークしていることをヒントに立案をしました。 しかし、実際に機能をリリースしてみると、申込企業数は月に数件あれば良いところで、かつ実際に利用を表明した企業も、ほとんどが掲載までは至らず、途中の掲載記事作成の時点で歩留まりしてしまいました。
実際に掲載を開始しても、ほとんど売り手企業から売却打診をされず、また無料でスタートしているためかモチベーションがそこまで高くなく、売り手への返信が遅いなど、プラットフォーム全体のUXを損ねる結果ばかりを生み出しました。
トライアルプランは見事に、作ったけど「使ってもらえない機能」でした。

この機能開発での失敗点は以下だと内省しています。
* 課題に対する仮説を正しいと信じ込んでしまい、いわゆるProblem/Solution Fit(プロブレム・ソリューション・フィット)を疎かにしてしまった * 課題に対するソリューションの筋が良くなかった(特にビジネスオペレーションを軽視してしまった)

致命的だったのは、実際に作ったプロダクト(もしくはモックアップやプロトタイプ)を実際にユーザーが使ってくれそうかどうかヒアリングすることなくリリースをしてしまったことです。
Wantedlyは人材サービスであり、M&Aとは異なる性質であるのにも関わらず、「そこまで大きな負担ではないから、これぐらいならやってくれるだろう」とタカをくくってしまったのです。
また、プロダクトとオペレーションの作り込みも甘く、実際に作り始めたユーザーへのサポートも出来ていませんでした。
結果として、「使ってもらえない機能」になることは必然だったのです。

新たに開発をした「クローズドプラン」

f:id:yokotinnn:20200714143439j:plain トライアルプランの反省を踏まえて、ユーザーにとってのソリューションは、気軽に掲載まで無料でできることではなく、純粋に「顔出しNG」であることが多いのを解決する機能なのではないかとふりだしに戻りました。
そこで、次なる機能開発では、買い手企業が"会社情報を一般公開せずに"売り手企業に直接アプローチすることができる機能が、買い手企業のペインを解決するソリューションであるという仮説を持って取り組みました。
M&Aクラウドのビジネスモデル上、一見従来の「掲載プラン」の持ち味が失われてしまう機能ではあるもの、まずはプラットフォーム自体を使ってもらうことでM&Aクラウドの満足度を上げ、そこからのアップセルで「掲載プラン」を利用してもらおうと考えたのです。

また、同様にプロダクト開発面での反省を活かして、以下を心がけました。

  • 仮説の確からしさをきちんと検証するために、ユーザーヒアリングを徹底して行うこと
  • プロダクトリリース後のオペレーションとモニタリング基盤を構築すること

ヒアリングの「事前準備」

サービス自体の新規開発を行うときはリーンスタートアップに倣いユーザーヒアリングを当然のように行うと思いますが、新規機能の開発(しかも規模の小さいスタートアップ)ではユーザーヒアリングを簡易に済ましてしまうことは多いのではないでしょうか。

クローズドプランは、買い手企業が"会社情報を一般公開せずに"売り手企業に直接アプローチすることができる機能です。
実は、クローズドプランのような買い手企業が匿名の売手企情報(業界用語でノンネームと呼ばれる)を見てスカウトをするというサービスは、すでに競合他社で前例があったのですが、トライアルプランと同じ轍を踏まないよう、M&Aクラウドだからこそ「使ってもらえる」機能を開発できるようにヒアリングに精一杯取り組みました。

M&Aクラウドのクローズドプラン」のペルソナは誰で、どういうペインを抱えているのか、その課題を解決できるようなソリューションは何で、考えているもので本当に合っているのかを明確にする必要がありました。

まず、ペルソナ像を3パターン作り、そのペルソナのすべてのパターンにヒアリングができるように営業チームと協力してヒアリングを行いました。

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さらには、毎回ヒアリングをする買い手企業を事前に調査して、企業毎に質問を変えて(ヒアリング対象企業の業種、インタビュイーの役職等を考慮)ヒアリングに臨みました。

<参考>ユーザーヒアリングシートのFMT

docs.google.com

ユーザーヒアリングの「試行回数」にこだわる

結果としてですが、クローズドプランの機能開発では、以下の企業数に1ヶ月間かけて徹底的にヒアリングをしました。

  • 買い手企業15社
  • 売り手企業6社

合計20社程度にヒアリングをしたことで、ヒアリング前に立てたペルソナやソリューションに自身が持てるようになりました。
よく、「ヒアリングは最低6社程度したほうが良い」と書籍等では書かれていますが、6社で止めていたら、アウトプットの質は変わっていたかもしれません。
また、人気の案件にスカウトを送ることができる「オプション機能」は他社にはないM&Aクラウド独自の機能であり、これはヒアリング結果からアイデアを得ることができました。

オペレーションの構築

トライアルプラン時にはとりあえず作ってしまった機能も、クローズドプランではしっかりとオペレーションを組んで、「何をどこまでやるか」ということを明確にして取り組みました。

各部関係者を巻き込んでオペレーションを構築し、事前に念入りに擦り合わせをした上でリリースを迎えることが出来ました。

<参考>オペレーションの整理 f:id:yokotinnn:20200712234712p:plain

クローズドプランの成果

結果として、クローズドプランはトライアルプランの20倍以上の利用社数を記録しており、毎月一定以上の安定した利用率で推移しています。
また、ヒアリングを基に開発した「オプション機能」も安定して申込がされており、アップセルや従来の「掲載プラン」へのアップグレードへのおためし機能として活躍し始めています。

最後に

このブログで記載した通り、機能開発時のユーザーヒアリングは非常に重要です。
そもそもすでに出来ているスタートアップ企業が大半だと思うので、当然のことを記載しただけのように見えると思いますが、今回は非常にわかりやすく「使ってもらえない」機能の開発→「使ってもらえる」機能への昇華を行えた貴重な体験だったので、共有をさせてもらいました。
引き続き、よいプロダクト開発をしていきます!